あっつい日が続きますねー。ちょっと外に出ただけでシャツがぐずぐずになってしまうレベルなので、毎日の出勤・外回りが憂鬱です。
暑い中で外回り…となると証券時代の営業を思い出すのですが、当時は上場している企業以外で、自社の営業担当がアプローチしていなければ、事業・医療・財団問わず法人にも営業をかけていました。
その中には宗教法人も含まれていたのですが、ちょうどネットで調べものをしていた時に、東洋経済さんの「坊主丸儲け」とはいかない住職の厳しい懐事情という記事が目にとまりまして、当時の宗教法人さんへの営業経験を思い出しました。
そこで今回は私の経験を元に、宗教法人の取引実態についてご紹介をしたいと思います。
そもそも宗教法人って?
皆さんは宗教法人と聞くとどのようなイメージを持たれるでしょうか。有名な宗教の名前や、近所にあるお寺の名前等を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。
宗教法人とは、特定の宗教の教養等を広めたり、信者の教育を行ったりすることを目的として設立される団体の中で、法人格を持った団体になります。
文化庁HPより引用:http://www.bunka.go.jp/seisaku/shukyohojin/gaiyo.html
詳しく知りたい人はこんなPDFもありましたのでご覧ください。
http://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/h30_shukyo.pdf
※宗教法人に対する税金の考え方などが詳しく紹介されていました。
私もこの記事を読むまで宗教法人=税制に優遇があるという考えを持っていましたが、法律的には収益事業と判断されるもの、例えばお守り、おみくじについては喜捨金として扱われる為に非課税のようですが、絵葉書やストラップなどについては物品販売業として課税がなされるようですね。
金銭事情の格差がすごい
さて、東洋経済の記事でも紹介されていたのですが、基本的に金銭的に余裕のあるお寺というのは、非常に少ないものと思われます。
例えば有名な仏像があるなど、観光名所として集客力があるお寺に関しては余裕があるでしょうが、町の中の一区画に昔からあるようなお寺に関しては、恐らくお寺の仕事のみではご飯を食べていくことも精一杯というところもあったという印象です。
私は当時比較的お寺の多い地域で営業をしていたので、大小様々なお寺に飛込訪問をしましたが、小さいお寺に関しては兼業で農業や会社勤めをされているところもあったと記憶しています。
また住職さんとお話をしても、檀家さんが減ってきているので余裕はない、その上建物の修繕も行わなければならないので、お金はなくなるばかり…という話を聞かせてもらったことを覚えています。
そうした余裕のないお寺がある一方、有名なお寺なんかは桁違いの金銭事情があるところもたくさんありました。
例えば日本人ならほとんどが知っているレベル(文化財級)のお寺ですと、私が見た中では2桁億円程の運用額があることもざらでした。
またその金額はあくまで私が在籍していた証券会社の口座の金額であり、他の証券会社や銀行にも口座がありますので、恐らく総額では金融資産のみで3桁億円はゆうにあったのではないかと思います。
さすがにこれ位の額になってくると低リスクでの運用を実施されていたので、債券の保有が目立っていたと記憶しています。もしかすると他の証券口座では株式をお持ちだったりしたのかもしれませんが。
ところでお寺が株式取引、と言えば、京都の青蓮院門跡が有名ですね。
一時期日経平均株価が下がると利益が出るようなポジションで空売りを行い、危うくロスカット(損失が一定金額以上大きくならないように、強制的にポジションを解消されること)されるところを耐えたお寺という事で、「空売りの聖地」なんて呼ばれていたお寺です。
当時は日経平均が下落すると利益が出るポジションを大きく持っていたため、日本経済が落ちる方にかけるなんてとんでもない!みたいな論調も目にしましたが、その出来事が転じて空売りの聖地なんて呼ばれるようになるなんて思いもよらなかった事態でしょうね。
と、宗教法人の運用事情に関しては、リスクをどこまで取るのかというところからお寺により様々ということです。
ほとんど個人での取引
私が営業として担当したお客様はというと、宗教法人の口座ではなく、そのお寺の住職さん個人の口座を担当することがほとんどでした。
中には法人名義でのお取引もありましたが、低リスクな商品で預金よりも少し利率の良い商品を代わりに保有するといったものが多くを占めていました。
住職さん個人名義の取引となると、口座名義人のリスク許容度、資産額に応じて様々な商品を取引される為、高リスク商品から低リスク商品まで様々な取引がありました。
法人名義の口座となると、証券口座を開設するにあたり、個人の一存では決められないとのことで関係者で会議を行う必要があったりしたので、口座開設からハードルが結構高いという印象があります。
そういう経験もあったので、先ほどご紹介した京都の青蓮院門跡では、一体どのようなルールや意思決定者がいて、有名なお話となった高リスクな取引を行うこととなったのか、元証券マンとしては色々とドラマがありそうで非常にきになるところです…。
取引商品
宗教法人が取引していた商品とは、どのようなものがあるのでしょうか。
まずは低リスクな商品が資産構成の中で大きな割合を占めていましたね。
私の記憶にある大きな宗教法人さんの場合、預金や債券(格付けがAAAなどの優良債券)の保有額が預入資産のおよそ50%~70%といったところでしたでしょうか。
そこからは少し格付けの低い債券(私の営業員時代はソフトバンクの社債などが高利率で人気でしたが)を~90%ぐらいまで保有。
最後に10%程を株式や投資信託にて保有といったイメージです。
基本的に債券をベースとした資産構成であったと記憶しておりますが、相場状況や営業員の手腕により、このあたりの比率は少し変わってくるイメージです。
お寺の格によっては運用での大きなミスが許されない状況もある為、有名なお寺になればなるほど、上記の通り低リスクでの運用を行っているところが多くなってくるのではないかと思われます。
宗教法人開拓は十寺十色
私の経験上、お寺によって事情が異なる為、一様に宗教法人の取引形態はこうだ!というものはございませんでした。なので有効な商品が何になるのかは、提案してみないとわかりません。
どういった商品を購入し、資産構成をどのような状態にするのか。
これはお寺の格式や宗派、意思決定のプロセスや他のお寺との関係、金銭面での懐事情など、様々な規則・しきたりがあって複雑になっているのが現状です。
もしあなたが金融商品の営業員で、宗教法人との取引を行いたいのであれば、まずは住職さんとの関係性を構築して、個人の口座開設を行うことが第一ステップになると思います。
住職個人の取引に関しては、特に厳格なルールがあるといった状況を見たことがないため、住職さんとの取引を通じて、法人取引におけるハードルがどこにあるのかを確認すべきです。そうすれば取引への道が見えるかも…!
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